ヴィーガン、ベジタリアン…持続可能な〝食〟のスタイルとは?
ベジタリアン、ヴィーガン、ぺスカタリアンなど、「食のスタイル」の多様性がますます進む昨今。名前は聞いたことはあるけど、一体どういった食生活のことを指すのか、いまいちピンときていないという人も多いのではないでしょうか?
今回は、現在おもに実践されているベジタリアンのその種類と解説、またどういった視点で私たちが自分たちの〝食〟を選んでいけばいいのかをff的視点でまとめていきます。
ベジタリアンの種類
ベジタリアンは日本語に訳すと「菜食主義者」。あらゆる菜食の総称として使われていますが、現在では食べるもの、ポリシーなどに合わせて分類がさらに細分化されています。ここではまずはじめに比較的ゆるやかなベジタリアンの種類から説明し、次により厳格なヴィーガンについて触れます。
ベジタリアン(菜食主義者)
- ラクト・ベジタリアン(乳菜食者)
植物性食品に加えて、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品を食べる人(食べないもの:肉・魚・卵)。 - オボ・ベジタリアン
植物性食品に加えて、卵を食べる人(食べないもの:肉・魚・乳製品)。 - ラクト・オボ・ベジタリアン(乳卵菜食者)
植物性食品に加えて、乳製品と卵を食べる人。欧米のベジタリアンに多い(食べないもの:肉・魚)。 - ポーヨー・ベジタリアン
植物性食品、乳・卵製品に加え、肉類の中でも鶏肉のみを食べる人(食べないもの:魚、鶏肉以外の肉)。 - ぺスコ・ベジタリアン
別名「ぺスカタリアン」。植物性、乳・卵製品に加え、魚を食べる人(食べないもの:肉)。 - オリエンタル・ベジタリアン
ヴィーガンと同様、肉・魚・卵・乳製品を食べない人。加えて仏教で「五葷(ごくん)」と呼ばれる、匂いが強くて精力をつける野菜も食べない。(五葷(ごくん)=にら、にんにく、ねぎ、らっきょう、あさつき 等)。 - セミ・ベジタリアン(準菜食主義者)
基本的には菜食主義だが、ある程度であれば動物性食品を食べる人のこと。その時々の判断によって柔軟に判断することから「フレキシタリアン」と呼ばれることもある。 - その他:精進料理、マクロビオティック など
なお、国際ベジタリアン連合(IVU)では、上記のポーヨー・ベジタリアン以下をベジタリアンとは認めていない。
ヴィーガン(完全菜食主義者)
肉・魚・卵製品・乳製品・蜂蜜・動物由来のゼラチン・羊毛脂等の「動物性食品」を一切口にしない人のことを指す。またその範囲は食だけに留まらず、身につけるものにおいても、皮、シルク、ウールなどの動物製品を取り入れない。
- ダイエタリー・ヴィーガン
食の面においてのみのヴィーガンのこと。その他の生活スタイルでは、必ずしも動物製品の利用を避けてはいない。 - フルータリアン(果実主義者)
ヴィーガンと同様、動物性の食品を一切食べず、加えて果実以外の植物性食品もとらない人のこと。果実とその種子類のみを口にするが、ベースとなる考え方に植物の母体の命に影響しないもののみを食す、というものがある(例:リンゴの実を食べてもリンゴの木は死なないが、ニンジンは死んでしまう 等) - ロー・ヴィーガン
基本的にはヴィーガンと同じ食のスタイルだが、「生のもの」を食べるのが特徴。加熱する際にも48℃以上にはしない。食品添加物を避けられたり、ビタミンやミネラルを壊さずに摂取できる点がメリットとされている。
パートタイム・ヴィーガン…自分で決めた時間帯や期間にヴィーガンを取り入れるスタイルのこと。生活リズムや体調に合わせてフレキシブルな食生活を送れる。
ベジタリアンの発祥
日本ベジタリアン協会の公式HPによれば、「ベジタリアン」という言葉がはじめて使われたのは、英国ベジタリアン協会が発足した1847年。ベジタリアンの語源は、「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語 ‘vegetus’ に由来すると言われています。
一方で近年有力視されているのが、“vegetable”をベジタリアンの語源とする説です。かつて‘vegetable’は野菜だけでなく、果実や穀物などのあらゆる植物性食品を含んでいたことから、“vegetable+arian(〇〇主義の人”がベジタリアンの語源だと言うものです。
また、近代ベジタリアンの動きも19世紀のイギリスではじまります。産業革命で有名な都市、マンチェスターの聖書教会の会員によって「肉・魚は食べない。卵・乳製品は本人の選択とする」という、菜食中心の食生活が実践されました。
21世紀になってからは、宗教的意義や健康面への配慮のほか、動物の生命の尊厳を大切にするアニマルライツの観点や、環境保全、途上国援助などベジタリアンを選択する理由や目的も多岐にわたり、世界中でその人口が増えつつあります。
次に、現代ベジタリアンの主な動機を整理してみましょう。
ベジタリアンを選ぶ理由
- 宗教的理由
ヒンドゥー教やジャイナ教など、菜食主義を奨励している宗教。いずれもインド発祥の宗教のため、インドでは人口のおよそ3割が菜食であるとされている。 - 健康面への配慮
がん、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病や認知症などのリスクが減る、という研究結果も報告されている。一方で体質に合わない極端な食事制限をしてしまうことで、かえって健康被害を引き起こすという指摘もある。 - 環境保護の観点
肉を食べない(減らす)ことによって、畜産の輸送によって生じる二酸化炭素や、家畜によるメタンガスの放出も減らそうとするもの。そのほか畜産では放牧のために森林を伐採したり、糞尿を正しく処理しないことによって起こる水質汚染も問題となっている。 - 動物愛護の観点
「アニマルウェルフェア(動物福祉)」や「アニマルライツ(動物の権利)」を重要視し、動物愛護の観点からベジタリアンを選択する人もいる。
ベジタリアンを選択するときの注意点
健康や環境や動物の保護など、ベジタリアンを選択する理由は様々ですが、一方で注意しなければならない点もあると、ffでは考えています。ここからはff的視点からの「ベジタリアンになる上での注意点」を綴ります。
まず「食」とは、私たちの生命を維持するために、もっとも欠かせない要素のひとつである、という点です。宗教上の理由などのやむを得ない理由は別として、食によって自分の健康が害されてしまっては意味がありません。もちろん、だからと言って気の向くままに好きなものを食べまくればいいと言うわけではありません。大切なのは「適正」を知るということ。つまり、自分にとっての〝ちょうどいい〟を知る、ということです。
私たち生き物は、ひとつとして同じ個体ではありません。人それぞれ、体つきも体調も性格も違う。そこに文化的・社会的な背景という、住む地域や育ってきた背景も加わることで、さらに千差万別なひとりひとりとなります。成長期の子供と成長しきった大人では、必要な栄養素も違うでしょうし、男女で比べても、一日の摂取エネルギー量は異なります。さらに妊娠・出産の可能性のある女性は、そのライフステージによっても摂るべき栄養素はかなり変わってきます。同じ一人の人生の中でも、食に求められるスタイルは波打つように変化するものなのです。
昨今のベジタリアンの増加は、環境や動物保護に関心のある結果としてはとても好ましい傾向だと思う一方で、それが自分の体に合っているものであるかという視点も、同時に大事だと感じています。体に合っていなければ、続けることもできないのですから。
そしてこの「自分に合っている食生活」を見つけることが、案外むずかしいのです。
朝起きて一番になにを自分が欲しているか。お腹が空いたときに何を食べたいと思うか。そのためには栄養素の知識はもちろん、自分の体と(そして心と)にきちんと意識を向けて、そのニーズをキャッチするという繊細な行為が欠かせないのです。
自分に合った方法が見つかれば、それに合わせて「肉を食べる・食べない」、「魚までは食べる」、「肉も魚も食べるけど頻度を減らす」など、おのずとベストな食のあり方も見えてくるのではないでしょうか。
今の自分の〝ちょうどいい〟を知る。これが食の選択のために本当に必要な、最初のステップだと思います。
福島のベジフルな飲食店
野菜や果物の美味しい福島県。最近ではベジタリアンやヴィーガンを看板に出す飲食店も増えてきました。
今回はその中からff編集部おすすめのお店をピックアップしてご紹介します!
ヴィーガン対応のカフェ
カフェ Branch(郡山市)
プラントベースのヴィーガンランチのほか、動物性の食材を使わないヴィーガンソフトクリームが人気です(※2023年12月をもって店内ランチの提供は終了。今後はお弁当やカフェタイム、オーダーケーキなどが中心になる予定)。母体が自然に倣ったナチュラルな庭の施工も行っている会社のため、緑あふれるガーデンを見ながら過ごせる店内も魅力。
▶営業時間:10:00〜16:00( Lunch 10:00〜14:00)/定休日:月・火
▶Instagram
水彩カフェ(須賀川市)
環境や体のことを考えて、動物性を使わないプラントベースのランチやスイーツを提供しています。調味料も、伝統的製法で丁寧に作られたものを中心に、無添加で素材の旨みが引き出されたものがセレクトされています。
個室もあるのでお子様連れにも人気のカフェ。
▶営業日:木曜日・金曜日・土曜日
▶営業時間:Cafe Time 10:30 – 15:30(LO)/Lunch (takeout) 11:00 – 13:30(LO)/cake (takeout) 10:30 – 16:00
▶水彩カフェ公式HP
野菜がメインの飲食店
ヴィーガンやベジタリアンをうたってはいませんが、福島ならではの美味しい野菜をたっぷりと使った料理が食べれるお店もあります。
Best Table(郡山市)
四季折々を五感で味わう地産地\消の「べジカフェバル」として、生産者さんが丹精込めた地元食材をベストな形で調理して提供しています。中でも地元のブランド野菜をふんだんに使った「朝どれ野菜のサラダプレート」ランチは、野菜中心なのに満腹感のあるボリュームで、男性にもおすすめです。
▶営業時間:Lunch 11:00~14:30(LO 14:00)/Dinner 17:30~22:30(LO 22:00)
▶定休日:火曜日
▶Best Table公式HP
かもめ舎(須賀川市)
「自然栽培無農薬、化学調味料不使用」で、体にやさしい食事を提供するカフェ。普段のランチはもちろん、夏の時期のかき氷も人気。オーナー夫妻が北欧で買い付けたファニチャーやファブリックで飾られた店内も素敵。
▶営業時間:11:30-16:00(LO15:00) Lunch14:00まで
▶休み:木曜日ほか
▶かもめ舎Instagram
自分に合った、持続可能な食のスタイルを
食生活を選べるということは、多様な生き方を認める社会の実現にもつながります。一方で、やみくもに流行りで取り入れてしまったり、選択をする意味や影響を十分に考慮しないと、自分自身の健康をそこなったり、思わぬ加害者になってしまうという危険性があるのも事実。環境保全や動物愛護の観点からは、一刻も早く一人でも多くのベジタリアンが増えることが好ましいとされるかもしれませんが、かといって焦らず、体と心とお財布とじっくり相談しながら、〝自分にとってちょうどいい〟食のスタイルを見つけていきたいですね。この記事が皆さんの本当の「持続可能な食の選択」を考えるきっかけになりましたら、幸いです。
参考:認定NPO法人 日本ベジタリアン協会HP
大和総研「なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか」
Vegewel 【23年1月】日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査
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