味噌は心と体の万能薬。手づくりで感じる昔ながらの知恵。

手づくり味噌は、私にとっての薬箱
私が味噌を手作りするようになったのは、社会人1年目のとき。実家から郡山に引っ越して5年を迎え、自炊を通して食に興味を持つようになったのがきっかけでした。当時は末端冷え性を改善したくて、発酵食品で、なおかつ温かいお味噌汁を毎日飲み始めた頃。ちょうど叔母が20年近く味噌を作っていることもあって、一緒に作ったことが始まりでした。それから味噌づくりは毎年の行事となり、今では味噌は、私にとって毎日常備したいお薬箱のような存在になっています。
日本人の食と健康を支えてきたお味噌。私は「寒仕込み」と言って、大寒前後の冬場に仕込む方法をとっています。春・夏を越えて秋には完成するのですが、毎年12月中頃に思い出して初めて蓋を開ける、という流れが恒例(笑)。
その年の気候・湿度・材料・豆の茹で具合などによって、毎年風味が違うのもおもしろいし、乾燥した大豆がお味噌に変身する過程を楽しめるのも、味噌づくりの醍醐味です。
今回はそんな私の味噌づくりについて、昨年開いたワークショップの内容とともに、皆さまにご紹介します。
味噌づくりが好きすぎて、ワークショップを開催
2024年2月、私の主宰するSHIZEN TO KURASUで、味噌づくりワークショップを開催しました。それまでは私だけ、もしくは叔母と2人で作っていたのですが、「来年食べるものを今から準備する」という種まきのような作業が、好きを超えて誰かと共有したくなり…ワークショップ開催にいたったのです。
味噌を一年で一番寒い2月と言う時期に仕込むことには、ちゃんと意味があります。冬は麹の原料の米と大豆の新物が穫れる時期であり、しかも気温・水温が低いので雑菌の繁殖が抑えられること、麹の発酵のコントロールがしやすいので、美味しい味噌に仕上がりやすいというのが理由です。
冬の寒さを味方に仕込んだ味噌は、春になるにつれてゆっくりと発酵し、暑い夏を越えるとき最も発酵が進みます。そして秋になって気温が下がると発酵が落ち着いて、どんどんおいしさを増す、というのが寒仕込みの秘訣です。
なんと言っても食べてくれる家族の1年間の健康と幸せを祈り、自分の手で味噌を作るということが一番のわくわくポイントですよね。

味噌づくりのWS風景。材料を混ぜてボール状に成形中。大量の塩が手にしみてピリピリする…(笑)!
材料3つのシンプルな味噌づくり
私と叔母が実践している味噌づくりは、材料3つだけという、いたってシンプルなものです。
今回大豆は、福島市にて身体にやさしいお菓子づくりをしている関向あつ子さんが推奨する、滋賀県で無農薬栽培されたものを使用。米糀は地元の本宮市にある老舗糀屋「糀和田屋」さんから県内産のものを量り売りで購入し、塩はこのメディアでのつなぎ手でもある佐久間陽香さんから「心と体にしみる塩」を調達しました。特にこの塩は、人工的に熱を加えずつくられた海水ミネラルが豊富に含まれている天日塩で、まろやかなのに旨味が深いという優れものです。

材料は大豆・塩・米糀の3つだけ!
《味噌の材料》
☆出来上がりが4kg分相当の分量です
- 大豆:1kg(滋賀県の無農薬栽培のもの)
- 米糀:1kg(麹和田屋さんのもの)
- 塩 A:500g、B:25g(心と体にしみる塩)、C:1kg(特にこだわりなし ※重石用)
《道具》
- 調理用
- 味噌樽(味噌が入るだけの琺瑯容器やかめ等)
- 鍋(大豆を煮る用)
- ざる
- ミキサ―(豆をつぶす用。無い場合は、マッシャーやフードプロセッサーで代用可)
- 保存用
- アルコール(容器の消毒用)
- ポリ袋(塩重石用)
- 重石皿、重石(今回は2.5kgを使用)
- 新聞紙、紐
《味噌づくりの手順》
ステップ1:大豆を洗う、浸水する、煮る
1)大豆を洗う:水で大豆を洗う。これを数回繰り返す。
2)大豆を浸水する:大豆の約4倍ぐらいの水に一晩浸ける(冬場は18時間以上)。 十分に水を吸水すると、大豆は2倍くらいの大きさになる。※途中で新しい水に替えながら吸水させるとなお良い。
3)大豆を煮る:途中で水が無くなるので、さし水をしながら煮汁が豆にかぶるくらいを保ちつつ煮る。 親指と小指ではさんで楽につぶれるくらいが目安。※大きい鍋で煮る場合は量にもよるが、4時間くらいかかる。圧力鍋を使うとより短時間で煮ることができる。
- 浸水から4時間。乾燥大豆が卵型に!
- アクを取り除きながら焦がさないように。
ステップ2:麹と塩、煮て潰した大豆を混ぜる
4)麹と塩を混ぜ合わせる:麹と塩A(500g)を混ぜ合わせておく
5)大豆をつぶす:煮上がった豆をざるに上げ、熱いうちに豆をつぶす。冷めると大豆が固くなりつぶしにくくなるので、 その時は少し温める。
《ポイント!》漬物用ポリ袋や布袋に入れてすり鉢で叩きながらつぶしたり、 ミキサーやフードプロセッサーなどを使うとやりやすい。
6)麹・塩と大豆を混ぜる:4)で混ぜておいた麹と塩、茹でてつぶした5)の大豆を(冷めてから)上下左右にムラなく混ぜる。
《ポイント!》少しパサついているようなら大豆の煮汁を混ぜてもOK。少しずつ加え、耳たぶくらいの柔らかさにする。
- 麹と塩A)500gを混ぜ合わせて。
- 茹でて潰した大豆と混ぜる。耳たぶくらいのかたさが目安。
ステップ3:混ぜた“味噌の素”を樽に詰める
7)味噌樽に詰める:容器をアルコール消毒する。6)で作った味噌の素をソフトボールくらいの大きさに丸め、ボウルに叩きつけるように投げ入れる。隙間なくしっかり詰めたら最後に上から押し、中に空洞が残らないようにしてから表面を平らにする。
《ポイント!》 この時なるべく空気が入らないようにするのがカビ防止のポイント!
8)表面に塩を振る:平らにした7)の表面に塩B(25g)を振る。
- 大豆・塩・麹を混ぜたら、ボール状にして、
- ボールを味噌樽に叩きつけながら…
- 隙間なく詰めて表面を平らにする。
ステップ4:重石をして保存
9)塩で重石をする:ポリ袋に重石用の塩C(1kg)を入れて空気を抜き、口を縛る。隙間ができないように味噌の表面に広げる。その上にさらに重し皿と重石を乗せて新聞紙で覆い、紐でしばる。
10)冷暗所で保管する
- ポリ袋に重石用塩C)1kgを入れたら、味噌の上にON!
- 塩袋の上に重石皿を乗せて、
- さらに重石皿の上に重石2.5kgを乗せたら…
- 最後に新聞紙と紐でくくる!
ステップ5:天地返し、半年くらい寝かせたら完成!
11)天地返し:発酵の途中で味噌を一度容器から出し、上下を入れ替える「天地返し」をする。空気に触れやすい上部と触れにくい下部を均一にし、発酵を促すのが目的。 夏くらいに味噌の状態をチェックしつつ天地返しをし、カビが生えていたら取る。天地返しをしてもしなくても味噌はできるので、できる範囲で◎
12)完成!:秋以降になったら開封!発行の具合を見て、良さそうなら手づくり味噌の完成です!
手づくり味噌の開封の瞬間は…やっぱり緊張!
昨年の2月のワークショップの時に仕込んだまま、およそ11ヵ月間一度も触らず実家の蔵に眠っていた私の味噌。丁寧に包まれた新聞紙を解くときが、一番緊張するシーンでもあります。カビは、色や種類によっては発生していても問題ないとされているのですが、やっぱり少ないほうが嬉しい。味噌の表面にカビがあるのか?どんなカビか?と、ドキドキしながら蓋を開けてみると…。
味噌の表面にはやわらかい膜のような白カビがあって、所々に黒ずみが(涙)。しかし残りの部分は大成功!天地返しをして全体が均一な濃さ・塩梅になるよう混ぜ合わせたら、今年用の味噌が完成です!

寝かせた味噌は最後に天地返しをして、全体を均一になじませる。
味噌の魅力にみせられて、「食が未来を紡ぐ」をコンセプトにして開催した今回のワークショップ。昔からの知恵がつまった伝統食をつなぐことはもちろん、何より自分で作った味噌を食べる喜びは、食べた人の心も体も健やかに、あたたかくしてくれます。
私自身も毎日みそ汁を飲むようになってから、基礎体温が上がったり、風邪をひきにくくなったりなど恩恵を受けるようになりました。お味噌の世界は、やっぱり広くて奥深い。
ちょうど一年でいちばん寒くなる大寒のこの時期。皆さまもぜひ自家製のお味噌で、心も体もほっこりあたためてみませんか^^?

今夜はなめことお豆腐のみそ汁♪
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